アレルギーに関する雑誌の論文で興味深いものがあったので一つ紹介致します。‘’たかが‘’口呼吸と思っていた事が喘息発症に影響するといった論文です。京都大学が滋賀県長浜市民(9804人)で調査したものです。
鼻呼吸ではなく口呼吸だと、どの程度それが喘息と関連性があるかを検討した論文です。以前からアレルギー性鼻炎は喘息発症の危険因子と知られていましたが、アレルギー性鼻炎の人に多く認められる口呼吸が実際どの程度喘息発症に影響しているのかは不明でした。今回の論文はそれに関して研究されたものです。
結論からいいますと9804人の17%が口呼吸を自覚しており、口呼吸をしている人が喘息になる可能性は鼻呼吸の人の1.85倍でした(これをオッズ比1.85倍といいます)。またアレルギー性鼻炎の喘息の罹患オッズ比は2.2倍でした。さらにアレルギー性鼻炎でかつ口呼吸を合併している人の喘息の罹患オッズ比はなんと4.09倍でした。つまりアレルギー性鼻炎を持ち、かつ口呼吸をしている人は約4倍の確率で喘息を発症するリスクがあるということです。鼻呼吸のメリットとしては吸気の加温、加湿、浄化機能などが考えられていますが、今回の研究ではそれ以上の原因に関しては究明されていませんが、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などで慢性的に口呼吸をしている人は要注意です。北海道は本州のスギ花粉の様な激しい鼻炎はありませんが、これからは確実にシラカバやイネ科植物の雑草類の花粉症が多く認められます。また発症年齢も低年齢化してきているのも事実です。口呼吸をしている人(児童)の早期からの適切な管理が将来の喘息予防になっている根拠を示している論文でした。なお、口呼吸になってしまった学童の学力が低下傾向を示すといった論文もあります。
Mouth breathing, another risk factor for asthma : the Nagahama Study
Allergy 2016.71:1031-1036